目的: 脳科学的手法の1つである近赤外分光法(near infrared spectroscopy : NIRS)を測定用具とした感覚刺激に対する新生児の大脳皮質の神経活動に関する研究を概観し, 大脳皮質の神経活動と看護ケアの関連を検討することの意義と課題を明らかにすること.
方法: 医中誌Web, PubMed(収載: 1993~2008年)をデータベースとし, 検索式(新生児OR早産児)AND(近赤外分光法), (neonates OR infants)AND(near infrared spectroscopy)を用いて収集した文献のうちNIRS指標を大脳皮質の神経活動指標として用いていた15文献について検討した.
結果: 検討された感覚刺激は「聴覚刺激」「視覚刺激」「侵害受容性刺激(採血)」「嗅覚刺激」「受動運動」で, 刺激に対する神経活動の測定部位は関連する感覚野か前頭葉であった. 対象は正常新生児又はNICU入院児で, 早産児を対象とした研究は侵害受容性刺激(採血)に関する研究が多かった. 刺激に対する神経活動時の測定部位での反応として, 酸化型ヘモグロビンや総ヘモグロビンの上昇が見られていたが, 研究間で刺激や測定部位が一定でなく, 刺激に対するNIRS指標の変化は十分に明らかではなかった.
結論: NIRSは既存の測定用具では評価できなかった新生児の感覚的経験を客観的に評価できることから, 新しい測定方法として期待されている一方, 測定用具としての感度を検討している段階であり, 既存の生理・行動指標と合わせた観察研究などの基礎的な研究の積み重ねが必要であると考えられた.