本研究は, 全国新生児専門医制度研修施設の基幹施設と指定施設の「重篤な疾患を持つ新生児の医療をめぐるガイドライン」の活用状況に関する看護師と医師の認識を通して, 本ガイドラインの理念を達成するために取り組むべき課題を検討した.
全国262施設に配布し, 194施設, 276名から回答があった(回収率52.7%). そのうち, 看護師と医師の両者が回答したのは83施設(31.7%)であった.
新生児の治療をめぐる話し合いを進めるための課題として, アドボカシーのためのモラルスペースが有効と考えられた. すなわち1)父母と医療スタッフの自律性が尊重される姿勢があること, 2)自己の良心からの反論を表明できる機構づくり, 3)非公式に倫理観の違いが検討され, 倫理的な問題は常に話し合いをする環境づくりが必要と考えられた.
また, 本ガイドラインが重篤な疾患を持つ新生児に対し, その子どもの最善の利益を導くために広く活用されるようになるためには, 1)父母と医療者の双方が意思決定に参加し, 共通のステップを踏めるような具体的な話し合いのガイドにし, 2)感情の対処に加え倫理分析を実行できるような内容を加える必要があると考えられた.