いかなる言語も、それが外国人の口にのぼると、すでに習得された母語の影響によって発音その他にかなりの改歪を蒙ることをまぬがれない。外国語学習においては、習得する側にも教える側にも、両言語の組織の異同についての言語学的な知識が必要とされる。筆者は四人の日本人に現代ギリジァ語を教えた体験から、日本人のギリシァ語習得上の難点(ここでは発音上のそれ)を指摘する。はじめに現代ギリシァ語と日本語の音体系を比較してその差異点を明らかにし、ついで具体的な例をあげつつ日本人の犯しがちな発音のあやまりを列挙してゆく。子音では〔l〕>〔r〕(〔l〕を〔r〕とあやまる)、〔θ〕>〔s〕,〔δ〕>〔d〕,〔γ〕>〔g〕,〔v〕>〔b〕,語末の 〔n〕>〔η〕その他、母音では 〔u〕>〔ω〕その他、最後に両言語のアクセントの性質のちがいに由来すする誤りについて述べてある。