本報告は, ラオス中南部の農村地域において, 児童のタイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini : O. viverrini)感染に関わる要因を検討するために, 対象児童とその家族の日常的な魚の摂取習慣(リスクフィッシュおよび生魚の摂取習慣)と児童のタイ肝吸虫感染の状況との関係を明らかにした. 59組の児童(タイ肝吸虫感染が認められた子どもと認められなかった子ども)の養育者(親)に対して面接調査を実施し, 家族が頻繁に食べる魚, 家族が生で頻繁に食べる魚, 対象児童が魚の生摂取を開始した年齢について回答を得た. その結果, 対象地域では, リスクフィッシュが頻繁に摂取されていた. 家族が頻繁に摂取しているリスクフィッシュ, 生で頻繁に摂取している魚の種類は, 感染群と非感染群の間で有意な差は認められず, 家族の魚の摂取習慣が子どものO.viverrini感染に与える影響は十分に確認できなかった. 一方, 感染群は非感染群に比べて生魚の摂取経験を持っている児童が有意に多く, 児童が幼児期や学童期から生魚の摂取を開始することが, 児童のタイ肝吸虫感染と関連する一因となっていることが示唆された.