本研究は, 普通型車いすシートのたわみが安楽座位時の臀部ずれ力推定値に与える影響を検討する目的で行った. 対象は健常成人男性14名(20.6±0.6歳)であった. 実験は, シートのたわみを調節することによって3条件(たわみ小, 中, 大)で行った. ずれ力の推定には筆者らの実験モデルを用いた. 統計学的解析は一元配置分散分析を用い, 3条件間で比較した. その結果, 臀部ずれ力推定値は「たわみ小」では47.9±7.0N, 「たわみ中」は42.8±4.7N, 「たわみ大」は39.8±6.6Nであり, 「たわみ小」と「中」の間(p<0.05)と, 「たわみ小」と「大」の間(p<0.01)に有意差が認められ, たわみが大きいほど, 即ち脊柱後彎頂点より相対的背もたれ高が高くなるほど臀部ずれ力は低値を示していた. 本研究により, 長時間の車いす座位をとる患者の車いすを考えるにあたっては, 脊柱後彎頂点と相対的背もたれ高との関係を考慮したたわみ量の調整・再検討が褥瘡予防の観点から重要であることが明らかとなった.