本研究の目的は, 外来通院中の慢性心不全患者の疾病の自己管理の実態について明らかにし, 心不全の臨床指標である脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)との関連について検討すること, そして, 本研究から得られた結果を急性増悪予防のための疾病管理プログラムを作成するための基礎資料とすることである.
A県内の医療機関3施設に通院する慢性心不全患者を対象に他記式構成的質問紙を用いた個別面接法を行った. その結果, 回答者109名中, 心不全の病識が認められたのはわずか7.3%であった. 塩分・水分摂取についても同様に有識者は20%以下であった. また, 対象者は7割以上が糖尿病や高血圧症を合併していた.
さらに, 89名において, 疾病の自己管理要因と心不全の臨床指標であるBNPとの関連を検討した結果, 89名中21名のBNP値が観察期間中の3ヵ月で悪化しており, 塩分制限を行っていない対象者においてBNP値の悪化が認められた.
以上より, 疾病管理プログラムには, 心不全の病態や疾病の自己管理に関する適切な知識の提供及び基礎疾患の管理も内容に入れる必要があることがわかった.