本研究は, 地域で生活する高齢者の健康診査での貧血検査の必要性と高齢者の貧血の判断基準について検討を行った. 対象は老人保健法に基づく基本健康診査を受診した40歳以上男性362名, 女性621名である. 貧血検査の結果より, 造血機能は男女とも70歳代以降から有意に低下し, また加齢にともない個人差が大きくなっていた.
貧血は高齢者の活動性を維持した社会生活を送るための指標として重要な項目である. 貧血症状を鑑別しにくい高齢者にとっては血液学的検査が有効であり, 健康診査で高齢者に貧血検査を実施することは, 二次性の貧血の早期発見に加え, 加齢による経年的変化をふまえ個々にあった生活指導に活用することができ, 意義が大きいと考える.
また, 地方の一地域で生活する住民を対象とした貧血検査から得られた結果ではあるが, 65歳以上の高齢者の貧血のスクリーニングの基準値の一例として, 性別のヘモグロビン濃度の(平均値-標準偏差)を正常範囲最小値とし, 男性13.1g/dl, 女性11.8g/dlを提案したい.