生体肝移植ドナー10例の術前から術後3ヶ月までの身体回復過程を縦断的に観察し, 更にQOL調査票および不安尺度を用いて身体面および心理面での経時的変化を分析し, 以下の結論を得た.
1. ドナーの臨床的所見・データは術後1ヶ月目でほぼ術前まで回復したが, 身体的QOLは3ヶ月経っても十分には回復せず, 日常生活や活動が制限されていた. そのため, 術前から術後の生活をイメージできるような情報提供やカウンセリングが必要と思われた.
2. ドナーは本来健康なため順調に回復する場合が多いが, 術後疼痛は3ヶ月経っても存在し, 疼痛によって心身両面に影響を受けていた. そのため, 適切な疼痛コントロールおよび, より侵襲の少ない手術手技の工夫などが今後の課題としてあげられた.
3. ドナーは術前後を通して, 自分のこと以上にレシピエントに関する事柄に対して多くの不安を感じていた. したがって, 医療者は適時レシピエントに関する情報提供を行い, ドナーの不安軽減に努めることが大切と思われた.