アンモニア処理もみ殻(ARH)の飼料価値について検討し,あわせてARHを唯一の粗飼料源としたオールインワン飼料の開発が可能か否かを検討するため,乳用雄子牛6頭を使用し,肥育試験と消化試験を行なった。試験は肥育期(238日)と仕上期(84日)に分け,それぞれTrial 1および2とした。
Trial 1は,開放追込式牛舎で群飼とし,粉砕大麦,ARHおよび添加剤をそれぞれ,80%,14.4%,56%配合したオールインワン飼料(Ration I)を自由採食させた。
Trial 1の終了後,ただちに全頭をスタンチョンに繋留し,Ration Iを引き続き給与した群(大麦区)と大麦をトウモロコシに切替えた群(トウモロコシ区)の2群に,平均体重が等しくなるよう3頭ずつ区分けし,Trial 2を実施した。14日間の飼料切替の後14日間の予備飼育をし,56日間の肥育試験を行なった。
Trial 2の試験終了前に4日間採糞し,消化試験を行なった。それらの結果は次の通りである。
(1) Trial 1の238日間の6頭の平均増体量は241㎏,1日当り増体量は1.01㎏であった。
(2) Tria1 2では,トウモロコシ区の3頭に下痢が発生したため,増体成績は明らかに大麦区より劣った。しかし,枝肉量では両区に差はなかった。
(3) 大麦区およびトウモロコシ区の摂食飼料の消化率(%)は,それぞれ,乾物;71.3, 56.2,粗蛋白質;77.4, 50.6,粗脂肪;75.8, 71.7,粗繊維;17.3, 0, NFE;83.5, 68.6であった。
(4) Trial 1および2においてRation 1を給与した3頭の322日間の増体量は324kgであり,1日当り増体量は1.00kg,肥育終了時体重は584㎏であった。また,肥育期間中の飼料摂取量は1日1頭当り9.45㎏となり,1㎏増体に要したDCP量,TDN量はそれぞれ,0.86㎏, 5.69㎏であった。
(5) 試験開始後22週頃より,各牛とも1~2回の鼓脹症の発生とそれにともなう発育の停滞が見られたが,その治癒とともに,増体も代償的に回復した。各牛にルーメンパラケラトーシスが認められたが,肝のう瘍は認められなかった。
以上の結果から,粉砕大麦,ARHおよび添加剤の単純な配合でも,体重584kg,1日当り増体量1.0㎏の成績は可能であるが,鼓脹症およびルーメンパラケラトーシスの予防についてさらに研究が必要と思われる。