「ホスピタリティ」概念の受容と共に,「ホスピタリティ産業」の主張も見られ,既存の概念「接客業」を振り返ることが必要になった。本稿は文献調査をもとに,「接客業」という概念をめぐって,無償の「接客」行為が「接客業」まで発展してきた流れ,及び「接客業」という概念の外延と内包の変遷を考察してみた。元来礼儀作法・社交文化の一部とする「接客」が,経済発展や産業化の進行につれて,家庭内から社会へ広がってきたことを明らかにした。「接客業」は,一時的に,専門用語として取り上げられたが,戦後「サービス業」に置き換えられた。その理由は,言語外から考えれば,政治・経済などの社会状況及び産業構造の変化といった要因が挙げられ,言語内から考えれば,「接客業」に付加された「暗示的な意味」がその一因だと思われる。現在専門用語として扱われていないが,日常語としてまだ広く使われている。それは,「接客業」という概念が「接客」の定着と共に,すでに日本語に定着しており,また,「暗示的な意味」で敬遠されている時もあるが,逆に言うと,婉曲語のような便利さもあるからだと考えられる。