本研究では微分法の方程式への応用の題材として,高次方程式の解を扱う。教科書において,高次方程式は因数定理と微分法の応用の2カ所で別の単元として取りあげられる。この2つの題材を「高次方程式の解を代数的に求めることができなくても,解析的に迫ることができる」という一連の題材ととらえ,超越的再帰モデル(Pirie, S. & Kieren, T., 1989, 1994; et al.) の図と理論を規範的に適用することによりその授業の指導案の構成を図る。モデルを用いることにより,授業における学習軌道を一定の理論的枠組みの中で考察することが可能となる。
因数定理という代数的方法から解析的方法に切り替えるためには,数学的活動に立ち返り,その活動の内容に別の解釈を与える必要がある。生徒はこの授業での学習を通して,ひとつの手法にこだわるのではなく複数の方法によって高次方程式の理解を深めることができる。このような学習の蓄積はクリティカルシンキング(複眼的なものの見方)の基盤となる。