人間は言葉の世界をも生きる。言葉の世界には,多くの人々が問題意識を共有し,意見を主張し合う議論の場がある。私たちの身の回りにある言語文化は,この議論の一端が具体化したものである。国語の授業で大切なのは,学習者が言語文化と接することで,議論の場の存在を知ること,議論の場に参加すること,それらのことを通じて自分を創りあげることである。私は,接するべき言語文化として,一冊の本と学校図書館に注目している。一冊の本は議論の場におけるある発言の主体の具体化であり,その本が集積された図書館は議論の場の具体化だからである。国語の授業は,教科書教材のみに目を向けがちだが,一冊の本の読書と図書館利用について目を向ける必要がある。本稿は,目ざすべき授業の枠組とその枠組に基づいて実践した授業について述べ,読書指導と図書館利用指導を取り入れた国語の授業について提案するものである。