枕崎台風では広島県で2,012人の死者が生じたとされる。しかし,終戦直後の災害であり,死者数や死亡地点について不明な部分が多い。本研究では,郷土資料を収集し,広島県における枕崎台風に伴う死者数を再検討した。その結果,少なくとも2,169人の死者が生じていたことを明らかにした。また,死亡地点の地形をみると,土石流による死者の92%が沖積錐に位置し,洪水による死者の90%が低地に位置しており,豪雨災害で被災しやすい地形が定量的に示された。ただし,低地では自然堤防における死者がその半数以上を占めている。自然堤防上に集落が選択的に形成されていたことに加え,微高地である自然堤防にまで浸水が及んだことが要因として考えられる。さらに,死亡地点とハザード情報(土砂災害警戒区域・浸水想定区域)との関係を検討した結果,土石流では87%,洪水では83%がハザード情報の範囲内で死者が生じており,ハザード情報は適切に設定されているといえる。