比較論理学研究 Issue 16
published_at 2019-03-25

On the Latter Half of “Yaowang rulai pin 藥王如来品” of the Zheng fa hua jing 正法華經: How Zhu Fahu 竺法護 Coined Words to Translate the Saddharmapuṇḍarīkasūtra

竺法護訳『正法華經』「藥王如來品」後分における新造語の研究
Bai Jinghao
fulltext
269 KB
Ann-ResProjCent-CompStudLogic_16_123.pdf
Abstract
竺法護訳『正法華經』「藥王如來品」後分はサンスクリット本『法華経』「法師品」(Dharmabhāṇakaparivarta)に相当し、『法華経』の一乗思想の聴聞・受持・書写・説示・尊崇により、衆生達は速やかに成仏し得るという趣旨を記述するものである。「藥王如來品」後分に相当する漢訳及び品名を年代順に挙げれば以下の通りである。
• 『正法華經』「藥王如來品第十」(竺法護訳、286 CE)
• 『妙法蓮華經』「法師品第十」(鳩摩羅什訳、406 CE)
• 『添品妙法蓮華經』「法師品第十」(闍那崛多共笈多訳、601 CE)
本稿はこれらのうち竺法護訳『正法華經』に焦点を当てる。竺法護は西晋期(265–314 CE)に活躍し、訳経事業を遂行した名訳者である。竺法護訳は「古訳」に属する。白[2018] が指摘する通り、西晋中期の「写実精神」は同時代の竺法護に影響を与えた。彼の時代においては仏教術語が未だ漢語化されておらず、仏教思想を中国の文化風土に受容せしめるための特別の工夫が求められた。結果、彼の翻訳は難読の新造語に満ちることとなった。それにも拘らず、河野[2006] が指摘する通り、『妙法蓮華經』の訳出前において、竺法護訳『正法華經』は教養人の愛読書であった。本稿は竺法護訳『正法華經』「藥王如來品」後分を取り上げ、竺法護の新造語の特徴を明らかにすることを目的とする。
結論として、竺法護の新造語の特徴として以下の点を明らかにした。
1. 類義語を重ねる新造語が見られる。例:「殃釁」、「憍慢恣」。
2. 補足語が既存語の前に導入される。例:「續見」、「續蒙」。
3. サンスクリット語の接頭辞に対応する表現が使用される。例:「分別說」。
4. サンスクリット語の複合語の直訳表現が使用される。例:「世吼」、「如来水」。
5. 既存語に新しい意味が与えられる。例:「至真」、「上句」。
6. 西晋期に使われなくなった廃語が使用される。例:「崎嶇」。
Descriptions
広島大学比較論理学プロジェクト研究センター研究成果報告書(2018年度)
The draft of this paper was presented at the International Workshop, “Translating and Educating: The Transmission of Indian and Buddhist Texts and Thought,” held at the Tokyo Campus of the University of Tsukuba on 1–2 March 2019.