本研究の目的は, 短時期仮眠における自己覚醒の企図が, 睡眠構造および睡眠慣性に及ぼす影響を検討することである。実験は, 自分で目覚める自己覚醒条件と,実験者が強制的に覚醒させる強制覚醒条件の参加者内比較計画で行った。覚醒水準の評価には, 聴覚オドボール課題により算出された事象関連電位のP300と課題正反応時間,Visual Analog Scale (Vas)による主観的覚醒水準評定値を用いた。睡民構造の詳細な検討のために,Hori et al. (1994)の脳波段階判定(9段階)を用いた。実験参加者は,大学生・大学院生14名であった。実験参加者は,4minの聴覚オドボール課題と1minのVAS評定からなる計5分間の課題を2セッション(計10分間)行った。その後,約20分間の仮眠をとり,覚醒後に同様の課題を6セッション(計30分間)行った。本研究の結果,自己覚醒を用いて出眠した場合には,強制覚醒の場合と比べて,P300振幅は大きくなり,主観的眠気は低減していた。また,自己覚醒を意図した場合には,睡眠構造が浅くなる傾向があった。これらの結果から,強制覚醒よりも自己覚醒をもちいた仮眠が,午後の眠気を抑える方法として有効であることが示された。(518語)