本研究の目的は, 上部顔面運動の三次元行動解析により, 臨床で活用しやすい早産児の痛みのアセスメント・ツールとして開発したフェース・スケール(FSPAPI)の信頼性と妥当性を検証することである.
調査は, III次レベルのNICUにおいて16名の早産児に実施された61の処置場面(採血, 皮下注射, 栄養チューブ交換, 電極除去)について, 34名の看護師の観察によって行った. 評定者間信頼性はベッドサイドでの看護師間の観察結果の一致度を, 評定者内信頼性はベッドサイドの観察と同じ場面のビデオ録画との一致度を分析した. 妥当性については, PIPPによる併存妥当性を分析した.
評定者間信頼性について, 一致度は0.809(信頼できる一致度), κ係数は0.707(p<0.001)で「かなりの一致」を得ることができ, FSPAPIの同等性を確認できた. 評定者内信頼性については, 一致度は評定者間よりも低値で0.761と「満足できる一致度」ではなかったが, κ係数は0.626(p<0.001)であり, 「かなりの一致」を得ることができた.
FSPAPIで重要となる皺形成の判断は, ベッドサイドで直接観察するよりもビデオ画像のほうが難しく, そのため評定者内一致度は低く出ることが予想されていたが, 本研究ではかなりの一致を得ることができ, FSPAPIの安定性が得られたものと考える.
併存妥当性については, FSPAPIレベルとPIPPスコアの相関係数(ρ)は0.766(p<0.001)であり, 両者間に強い相関を確認することができた.
以上から, FSPAPIはPIPPよりも少ない項目, すなわち上部顔面表情のみを用いて, 早産児に実施されるベッドサイド処置に伴う痛みのアセスメントに使用できると考えられる.