目的: 本研究では, 低出生体重児を出産した母親とドメスティック・バイオレンス(DV)との関連について検証することを目的とした.
対象と方法: 2006年7月から10月に, 乳児4ヶ月健診に訪れた母親1,686人に研究協力依頼を行った. 自己記入式質問紙を用い, 対象者の背景, 妊娠前, 妊娠中における10項目の暴力行為の被害経験の有無とその程度について尋ねた. 分析は, 低出生体重児を出産した母親を低出生体重児群, 低出生体重でない児を出産した母親を非低出生体重児群とし, χ2検定および, 多重ロジスティク回帰分析等を用いて調整オッズ比(以下aORとする)を算出した.
結果: 質問紙の回収は1,385人(82.1%), 分析した対象者は1,186人(70.3%)であり, そのうち低出生体重児は88人(7.4%)であった. 暴力を受けた経験のある対象者の割合は, 児の出生体重が少ない母親程, 高い傾向がみられた. 2群間における暴力行為の被害経験との関連では, 非低出生体重児群に比べ, 低出生体重児群は, 妊娠前「交友関係や電話を細かく監視される」経験割合が有意に高く(p=0.033), aORは2.23倍(95%CI: 1.01-4.87)であった. 妊娠中に「性的行為を強要される」経験割合(p=0.Ol6), 「交友関係や電話を細かく監視される」経験割合(p=0.034)も低出生体重児の方が有意に高く, 各々aOR2.84(95%CI: 1.07-7.53), aOR2.58(95%CI: 1.06-6.28)であった.
結論: 2500g以上の児を出産した母親に比べ, 低出生体重児を出産した母親は, 妊娠前に「交友関係や電話を細かく監視された」母親が2.2倍, 妊娠中では26倍, 妊娠中に「性的行為を強要された」者は2.8倍と高くみられ, 低出生体重児出産の原因になりうることが示唆された. 助産師等の医療従事者は, 低出生体重児を出産した母親の背景にDVがあるかもしれないという視点で観察し, DVの早期発見・予防に努める必要がある.