働き盛り世代への健康づくりに向けた働きかけの示唆を得るため,ヘルスプロモーションを発展させたT社における26年間の保健師の働きかけと社員の変化を分析することにより,ヘルスプロモーションに向かうための保健師の働きかけを評価し,具体的な働きかけ方の手がかりを得ることを目的とした.方法は,50-55歳の社員150名の保健行動や健康意識に関するアンケート調査,安全衛生管理概要34年間分(1967-2000年)とT社保健活動に関する報告書・論文13編の分析,保健師への面接調査を行った.質的分析法に従って報告書・論文及び面接調査から得られたデータを基に保健師の唱道及び身体活動の増加に向けた働きかけについてモデルを用いて分析した.働きかけの評価を唱道に焦点を当てて,PRECEDE-PROCEEDモデルをもとに分析した結果,個人としての人生の開拓や組織の中での自己実現を健康的な行動と結びつけ,持続的な動機づけを図るとともに,受容・報奨的な働きかけと課題を課す働きかけを使い分ける戦略的側面が明らかになった.身体活動の増加をめざした働きかけについて,Marcusらの決定バランス尺度では賛成項目においてより具体的に働きかけられており,体験的プロセスにより多くの内容が見出せた.社員の行動は,変化しやすいものと変化し難いものがあり,運動等変化し難いものには,ストレスや仕事との関連が考えられたが,他調査と比較すると運動を行っているものは多く,長期的な働きかけの影響が示唆された.