唾液中分泌型免疫グロブリンA(secretory immunoglobulin A : SIgA)は上気道局所免疫機能の指標の1つとして知られている.SIgAは運動後に変動することが報告されているが,運動中の経時的変化については不明である.そこで,本研究は健常者を対象とし,中強度で60分間の自転車運動を行い,運動中および運動後の唾液分泌量,唾液中SIgA濃度,唾液中SIgA分泌量の経時的変化を検討した.その結果,運動開始15分後以降で唾液分泌量と唾液中SIgA分泌量は運動開始前と比較して有意に低下し,運動終了後15分で運動開始前のレベルに回復した.一方,唾液中SIgA濃度は運動中及び運動後に有意な変化を認めなかった.中強度運動中の唾液中SIgA分泌量の低下は,唾液中SIgA濃度ではなく,唾液分泌量の低下に起因することが明らかとなった.