放牧を主とする搾乳牛の血液性状を,年間に亘って調べてその動態を調査した.方法は,10頭の試験牛を指定して,毎月一回,13月の間,血液成分を主としてキット試薬を用いて測定した。結果は次のとおりである.
1) 測定した延130頭分の血液成分の平均値は,総蛋白7.31±0.75g/dl,血清蛋白分画では,アルブミン49.7±5.4%,α-グロブリン16.4±2.63,β-グロブリン10.1±2.18%,γ-グロブリン23.8±5.28%,A/G比1.01±0.23,尿素態窒素13.68±2.18mg/dl,尿酸1.11±0.25mg/dl,ヘマトクリット値31.6±3.08%,血糖49.41±10.0mg/dl,カルシウム9.6±1.36mg/dl,マグネシウム2.62±0.44mg/dl,無機リン3.9±1.31mg/dl,ナトリウム299.2±24.73mg/dl,カリウム14.32±0.24mg/dl,クロール649.2±64.3mg/dl,鉄143.3±49.9μg/dl,銅101.74±33.67μg/dlであった.
2) 肝機能検査のためのアルカリホスファターゼは6.58±2.42K-A単位,トランスアミナーゼのGOT58.40±23.2K-単位,GPT17.62±5.76K-単位,血清膠質のC.C.L.F.testは全例+++であった.これらの値は人の正常値に比べると,いずれも高値であるが,これをもって反芻獣の場合に肝機能障害とは判定できない.
3) 血液成分のうち,春の放牧開始とともに増加し,引続き青草摂取期間中高い値を保ったものは,総蛋白,アルブミン,尿素態窒素などの含窒素成分とヘマトクリット値であった.これらの成分は冬の舎飼期には低下した.
尿素窒素量は夏期の間は著しく変動した.
一方放牧を終えて舎飼期に移行して増加したものはカルシウムであった.無機燐はとくに舎飼期に低下するのが注目された.
春の放牧開始とともに一過性に増加したものは血糖とγ-グロブリンであった.