養殖ハマチの主たる餌料であるカタクチイワシに起因する食餌性疾病の本態を究明するために,200尾のハマチにカタクチイワシを単一投与し,これを試験群とし,同時にイカナゴを単一投与した200尾のハマチを対照群として,50日間の飼育を行い,試験群に生ずる食餌性疾病の影響を血液性状,成長,肝蔵重量等について調べた.得られた結果を以下に示す.
1) 試験群では実験開始10日後には摂餌の不活発,成長の遅れ,軽度の肝萎縮等が認められ,20日後には食餌性疾病による斃死が始まり,実験終了時までに試験群の約50%が斃死した.斃死魚に見られる特徴は,体色の変化(主として黒変),肝萎縮,眼球突出などであった.
2) 試験群は血漿蛋白質量の減少及び低い血漿総コレステロール量を示したが,ヘモグロビン量及びヘマトクリット値については,斃死が盛んな時期においても,対照群に比較して有意な差を示さなかった.
3) 試験群においては,血漿蛋白質量の減少及びA/G比の変化から,グロブリン画分の減少が推測された.
4) ハマチの血漿蛋白質には電気泳動的に,6成分が認められ,両群においてIII画分の組成比の変化が認められた.
5) リポ蛋白質画分は対照群ではIV画分に相当したが,試験群では一定せず,III,IV,V,VI画分にわたり不明瞭な脂質の染色が認められた.
6) 試験群においては,セルローズアセテート膜上の,リポ蛋白質の染色が不明瞭である事,及び血漿総コレステロール量の減少から血漿脂質の減少が考えられた.
7) 試験群の脂質のTLCから,トリグリセライドの著しい減少と,それに相対的なワックスエステルの増加が認められた.