本論考の主題は、テクスト種ウィットを素材にして、思考と言語の関係、思考の可能性、そして過去、現在、未来の関係について、考えることである。
人間言語の特質は、現在についてだけでなく、過去と未来について語り得ることにある。そして、人間言語は、未来について語るための一連の動詞(本論考では、ahnen, planen, vorausdenken等ドイツ語の例が挙げられている)を展開してきている。未来を考えることができるからこそ、現在、過去について語ることも意味を持ち得る。思考、それは想像力に多くを負う。生に内在する未来における可能性を信じ、現在を生き抜くことが、個々の生に課せられた課題であろう。日々の生において、笑いは大きな意味を有する。苦しい現実を笑いのめすことによって、生きる力を取り戻することができようし、さらに知恵も浮かぶ。
本論考は、テクスト種ウィットは、言語学的研究の対象、素材であるだけでなく、哲学的な思索を促すものでもあることを実証しようという試みでもあった。