高齢化を背景として, 日本の医療政策は予防の強化に重点を置くことになった。本稿では介護予防事業に焦点を当て, 高齢者の健康維持にかかわる医療制度的要因, 社会的要因, 個人的要因について考察した。これまでの研究では, 医療制度的要因では健康維持に関する制度的要因について, 社会的要因では社会が自然に及ぼす影響と付随して生じる健康問題, 平均寿命の地域差, 労働, 地域のソーシャルキャピタルについて, 個人的要因では遺伝, 所得, 生活習慣について検討されてきた。医療制度的要因ではハイリスク高齢者を対象にする方法と高齢者全体を対象とする方法をどのように用いるかが課題であると考えられている。社会的要因のソーシャルキャピタルは健康維持の分野で近年注目されている。個人的要因では, 有益な自己決定を行えない場合に, 行政によるサポートが必要とされている。行政は地域と個人の特徴を把握し, 魅力ある事業を提供する役割があると示唆された。