本稿は,自治体の条例制定権が拡大したといわれる,新自治法下での条例の適法性について考察するものである。本稿では,条例の適法性に関する議論は,旧自治法下のものが新自治法下においても継続するということを前提とする。しかし,旧自治法下で示された条例の適法性に関する判断基準を形式的に適用するだけではなく,条例の適法性について条例の立法事実との関係から考察していき,新自治法下において条例の適法性が争われた場合に,条例の立法事実がいかなる役割を果たすのかを示唆することを目的とする。この目的を達成するために,旧自治法下での二つの裁判例の概略をみていき,あわせて,新自治法下での一つの裁判例をやや詳しく検討していく。その結果, ①条例の規定が憲法の規定と抵触するおそれがある場合でも,条例の立法事実の存在が肯定されれば,条例の合憲性及び適法性も肯定される, ②条例の規定が法律の規定と抵触するおそれがある場合でも,条例の立法事実の存在が肯定されれば,条例の適法性も肯定される, ③条例の規定が憲法及び法律の規定と直接抵触しない場合には,条例の立法事実の存在が肯定されれば,条例の適法性も肯定されるということが示唆された。