本稿では単階層組織のパートナーシップ企業の管理形態と多階層組織のプリンシパル・エージェント企業の管理形態を比較する。パートナーシップ企業は全エージェントにチーム生産物を均衡予算配分することで、そして、エージェントが相互に自己規制しあうことで組織管理を行おうとする。これに対し、プリンシパル・エージェント企業はモニタリングとインセンティブの管理機能を組織の中に組み込むことで、そして、その機能を果たすプリンシパルに残余請求権を与えることでエージェントの行動を強制規制することで組織管理を行おうとする。我々はプリンシパル・エージェント企業でもパートナーシップ企業の自己規制による組織管理(パートナーシップ企業のエージェント問の相互集団圧力による集団規範の遵守をとおしての組織管理)が補完的に機能することを明らかにする。プリンシパル・エージェント企業はプリンシパルに残余請求権を与えるというインセンティブ制度を組織に組み込むことで、パートナーシップ企業での自己規制を真に確実な強制規制にする。ところが、プリンシパル、スーパーバイザー、エージェントからなる多階層組織を考えたとき、エージェント間の結託を阻止するために組織に導入されたインセンティブ制度は、残余請求権を与えられたスーパーバイザーとエージェント間に結託を誘発することになる。このとき、プリンシパルはスーパーバイザーに対するモニタリング制度を通じてスーパーバイザーとエージェントとの結託の誘発を阻止することになる。プリンシパル・エージェント企業がモニタリングとインセンティブ管理制度を組織に組み込むことで有効的にスー