水泳選手の競技動機を測定するために, 日本体育協会の開発したTSMIテストを広島県下の小・中・高校の水泳選手に実施した。その結果,
① 男女間の差異については, 1.目標への挑戦, 2.技術向上意欲, 3.困難の克服, 4.勝利志向性, 7.冷静な判断, 8.精神的強靭さ, 11.闘志などの尺度において, 男子が高得点を示し, 女子に比べ競技意欲は高いレベルにあることが伺える。又, 5.失敗不安, 6.緊張性不安の尺度では女子が高値を示し, 競技場面においては女子が冷静な判断や精神的強さに欠け, 自己をコントロールする能力に劣っていることが示された。
② 年齢レベルによる差異については, 小・中・高校のグループに分類して検討した。その結果, 1.目標への挑戦, 4.勝利志向性, 11.闘志, 13.不節制の各尺度において3グループ間の得点に有意差が認められ, 自己の目標や限界に積極的に挑み, 競技においても勝とうとする意欲は小学生が最も高く, 次いで中・高校生の順であった。又, 7.冷静な判断, 8.精神的強靭さなどの尺度でも小学生が高得点を示し, 競技場面でも情緒的に安定したものが見られた。更に, 9.コーチ受容, 10.対コーチ不適応の尺度も小学生に肯定的な反応が見られ, コーチとの人間関係が円滑に行われているのが伺えた。
③ 競技レベルについては, 全国大会出場者とそれ以下の地域大会出場者のグループに分けて検討した。1.目標への挑戦, 2.技術向上意欲, 3.困難の克服, 4.勝利志向性, 5.失敗不安, 6.緊張性不安, 7.冷静な判断, 11.闘志, 12.知的興味, 13.不節制, 16.計画性の各尺度で優位を示すように, 全国大会出場者のグループが, いわゆる「やる気」の面で高いものを示し, 良い成績を上げるため, 良い記録を出すことへの意欲が伺え, また, 競技場面においても, 情緒的に安定した状態で試合に臨んでいる様である。
④ 男子(女子も同様)グループをさらに, 小・中・高校生の年齢レベルや全国大会出場者とそうでない者の競技レベルについても比較したが, ①, ②, ③とほぼ同様の結果を示した。
⑤ 水球選手は高校の男子が対象であったところから, 競泳男子高校生と比較してみたところ, 4.勝利志向性, 12.知的興味の尺度で水球選手のグループが高い得点を示し, 9.コーチ受容, 10.対コーチ不適応の尺度では逆に否定的反応を示していた。
⑥ シンクロナイズドスイミングのグループは女子全体のグループと対比してみた結果, 4.勝利志向性, 11.闘志, 12.知的興味, 17.努力への因果帰属の尺度以外では, シンクログループが全て肯定的反応を示し, 特にコーチとの信頼関係が極めて良好な状態に保たれていることが注目された。