10人の男子大学生に系列パターンの追従課題を与えて, 最適制御過程(習得段階)と適応制御過程(転移段階)で30試行つつ追従させた。その後, 系列パターンを完全に見越反応で完了するという学習基準のある自己組織化過程に移行させ, そこでも習得段階と転移段階で系列パターンを追従させた。そして, それぞれの制御過程の各段階について, 4つのパフォーマンス測度(正反応, 見越反応, 誤反応, 無反応)から, その適応過程を比較した。その結果, 最適制御過程は正反応と見越反応で高い習得レベルを示したが, その後の適応制御過程では, 良好な適応レベルは見出されなかった。さらに適応制御過程から自己組織化過程へ移行したが, その初期段階における適応は, これまでの適応制御過程で見出された結果と同じ傾向であった。しかし, 自己組織化過程における適応レベルは見越反応の増大と無反応の減少により, 適応制御過程の適応レベルよりも高かった。
これらの結果は, 制御の階層モデルに即して検討がなされたが, 実験方法の改善が今後の問題として残された。