目的: 本研究の目的は, 早産児の母親退院後から直母開始までの期間における, 電動搾乳器の有効性を, 搾乳量と搾乳時間, 搾乳に伴う痛みと疲労の観点から明らかにすることとした.
対象と方法: 本研究デザインは準実験研究とした. 対象者は, 3次レベルの公立総合病院のNICUにおいて, 単胎, 在胎27~32週で出産した母親とした. データ収集内容は, 母親退院翌日から直母開始日までにおける, 搾乳回数・時間・量, 直母開始日の1回哺乳量, 搾乳に伴う痛み(手指, 腕, 乳頭)と疲労感とした. 母親退院後の搾乳方法は, 母親の希望をとりいれ, 電動搾乳器(Symphony®)をダブルポンプで毎日使用する母親(E群)と, 用手搾乳または手動搾乳器を使用する母親(C群)に割り付けた. 分析は, 母親退院後1週間と直母開始日において, 対象者別に記述的分析を行った後, 2群問の差をMann-WhitneyのU検定を用いて検討した。, 結果: 対象者はE群6人, C群4人であった. 母親退院後1週間, 直母開始日ともに, 搾乳回数は, 搾乳方法による違いはなかったが, E群のほうが, 1日の搾乳時間は有意に短く(p<0.05), 搾乳量(1回量, 1日量)は多い傾向であった. 母親退院後1週間において, E群のほうが, 手指と腕の痛み, 疲労感は有意に低く(すべてp<0.05), 乳頭の痛みは低い傾向であった. 直母開始日では, E群のほうが手指, 腕, 乳頭の痛みは有意に低かった(すべてp<0.05).
結論: 電動搾乳器による搾乳は用手搾乳法に比べ, より短時間で, より痛みや疲労感を感じることなく, より多くの母乳を搾ることができた.