広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 9 号
2011-03 発行

発音の誤りパターンが不規則な中度知的障害児に対する構音指導 <原著>

An Adaptation of the Phonologically-Based Treatment for a Moderately Mentally Challenged Student with Possibly Apraxia of Speech <Original Articles>
糸藤 理津子
全文
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CSNERP_9_51.pdf
Abstract
本研究は,構音の誤り音のパターンに規則性がなく,発語失行が疑われる中度知的障害児童に対し,固有受容感覚を高めさせ,正音産出を促すために,特に対象児の発話明瞭度の著しい低下に関与している音を指導のターゲットとし,その音の明瞭度を上げる構音指導や,発音発語器官の機能を高めたり,呼吸調整能力を高めたりする指導を導入し,それらの指導効果を検討することを目的とした。指導期における各セッションの指導内容として①リラクゼーション:粗大運動や微細運動を伴うリズム遊びや手遊び,②基本練習:発音発語器官の運動能力や呼吸調整能力を高めるための指導,③聞き分け練習:対象児の発話明瞭度を特に下げている/r/の聞き分け能力を高めるための指導,④構音練習:/r/を含む音や単語の正音産生率向上を目標とした指導,の4つを設定し,計10回の指導を実施したところ,単語レベルにおいて,音節数や/r/の語内位置に関わらず,/r/の正音産生率の向上が認められた。また対象児は,会話時に他者の話に注意深く耳を傾け,他者からことばの投げかけに対する適切な応答ができるようになるなど,全般的なコミュニケーション能力の高まりも認められた。
著者キーワード
中度知的障害児
発語失行
構音指導
聞き分け
口腔運動