「サービス輸出」を基調として成長してきたインド情報通信技術産業(以下,ICTサービス産業)については,その大都市圏への集積が注目されてきた。しかし,既存集積地での立地にかかわる費用増大と相まって,当該産業は地方都市を新たな立地点とした成長も模索しはじめている。また,大都市圏を持たないインド各州では,州政府が当該産業誘致を梃子に産業開発を試みるようになってきた。そのため,ICTサービス産業立地が起動させる空間的ダイナミズムを理解するためには,インド国外とインド大都市圏との関係だけでなく,非大都市圏をも包含した議論が必要となってきた。しかしながら,非大都市圏にあるインド地方都市へのICTサービス産業立地について,その特徴を論じるための具体的な材料は乏しい。そこで本研究では,北インドに位置するウッタラーカンド州都デヘラードゥーンにおけるICTサービス産業立地の現状を明らかにする。