「アジアに第1次フードレジームは存在したのか」というのが研究の主題であり, 統計資料に基づいてフードレジーム論を検討する。その際, コロニアル・ディアスポリック・レジームと呼ばれる第1次フードレジームに着目し, 具体的には英領インドの農産物貿易に焦点をあてた。英領インドは第1次レジームを主導したイギリスの統治下にある一方, 巨大な人口を擁しアジアとの関係も強い。こうした点から, アジアにおける第1次レジームを検討する上では極めて興味深い対象である。また, 典拠とした資料は山口大学東亜経済研究所に所蔵されている戦前期に収集された資料である。これを用いて, 20世紀はじめの第1次レジームとその崩壊期の英領インドの貿易が, ヨーロッパとヨーロッパ人ディアスポラ国家を基軸として描き出された世界で初めての基本食料の国際市場という第1次レジームの文脈でどのように解釈できるのかに取り組んだ。