2005年のMFA(多角的繊維協定)撤廃以降におけるインド繊維衣料産業の新たな動きに着目し, テキスタイルパークの開発の全体像とその空間的展開の特性を明らかにした。MFA撤廃以降, インドにおける繊維衣料製品の生産・輸出は中国とともに増加傾向にあるが, その規模は小さく, 国際競争力も弱い。また, 非組織企業の多さや児童労働など多くの問題を抱えている。そこでインド繊維省は2005年からテキスタイルパークを造成し, 世界水準のインフラを整備するとともに, 一貫した生産体制を構築することによって産業クラスターの形成を目指すこととなった。パークの開発・運営は工業団地開発に関する専門的ノウハウをもった開発業者(PMCs)が実施し, 同省はPMCs を支援している。2010年時点, 8つのPMCsにより40のテキスタイルパークがインド繊維省によって承認されている。パークの分布をみると, 西および南インドの繊維衣料産業が活発な州において展開しており, 東インドでの開発はほとんどみられない。より詳細にみると, パークの立地は従来の繊維衣料産業の集積地周辺, 大都市郊外および周辺, 地方都市に分類される。今後も斯業は既存の繊維衣料産地を中心として発展していくことが予想される。