覚せい剤乱用者における唾液中と全血中の覚せい剤濃度の相関を明らかにするために,51名の乱用者から経目的に唾液と血液を採取し,唾液pHおよび唾液中・全血中の覚せい剤濃度を測定した。唾液と血液が同時に採取でき,覚せい剤が検出された71組の検体では,1組を除き全血中の覚せい剤濃度(全血中濃度)より唾液中の覚せい剤濃度(唾液中濃度)が高値であった。全血中濃度に対する唾液中濃度比(唾液/全血濃度比)は大きく変動するが,唾液pH値との間には相関があった。覚せい剤分析には,濃度の点で血液より唾液が優れていた。唾液のpHを測定することにより,唾液中濃度から全血中濃度を推定することが可能であり,中毒レベルを推定できた。