生体肝移植ドナー候補者のCTデータを用いて,いわゆるCantlie線(Rex-Cantlie line)を含む平面(Cantlie面)と,中肝静脈を合む平面(中肝静脈面)との一致性を三次元画像により評価した。対象は2001年6月から2002年5月までに,cT検査を施行した健常生体肝移植ドナー候補者10例(男性7例,女性3例),平均32歳である。そのうち5例(男性3例,女性2例)に肝右薬切除術が施行された。CTの撮像には4系統のデータ系列数であるLightSpeed QX/i を用いた。dynamic studyの静脈相の体積データにより肝実質と肝静脈の三次元画像を作成し,肝実質と肝静脈の三次元画像をトレース・カット処理し肝静脈の還流区域を求めた。また,中肝静脈還流区域(MHV)をCantlie面と中肝静脈面で分割し,それぞれの右薬側還流区域と左薬側還流区域を求めた。それらの体積を比較し両者の還流区域の追分を計測した。またドナーとして採用された5例のグラフト肝重量を実測しグラフト肝体積を求め,予想される体積と比較した。全肝,右肝静脈還流区域,中肝静脈還流区域,左肝静脈還流区域の体積の平均値と標準偏差および全肝体積に対する割合はそれぞれ,1472±259ml,708±150ml(48±10%),414±175ml(28±12%),350±110ml(24±7%)であった。Cantlie面で分割されたMHVの右薬側還流区域は306±200ml(21±14%),左葉側還流区域は108±69ml(7±5%)であった。中肝静脈面で分割したMHVの右葉側還流区域は198±123ml(13±8%),左薬側還流区域は216±73ml(15±5%)であった。その追分の平均値とその全肝体積に対する割合は,108±92ml(7±6%)であった。Cantlie面と中肝静脈面が一致したのは2例のみで,残りはCantlie面が中肝静脈面の左側に位置していた。右薬切除術後のドナー5例のグラフト重量肝体積は478~856mlで,平均682±168mlであり,グラフト体積の予想値から判断すると切離面は中肝静脈面に近かった。