本研究は, 予防接種における2歳から3歳の年少幼児の行動を類型化し, 行動の持つ意味を親や医療者の関わりの視点から考察し, 予防接種への対処を助けるために必要とされる看護ケアについて検討することを目的とした. 対象は日本脳炎の予防接種を受けた健康な2歳から3歳の年少幼児とした. データ収集は平成14年7月26日から同年9月12日までの1.5か月に行い, M小児科医院外来で行った. データ収集方法は, ビデオカメラを用いて, 第1回および第2回の日本脳炎予防接種の来院時点から帰院までの幼児の一連の行動と親, 兄弟, 医療者の行動を含めて撮影・録画した. データ分析は, 画像は事例別に全行動を言語で記述し, 予防接種に対する反応に関連する行動を抽出し, 幼児の予防接種に対する反応の出現時期(嫌がる時期, 泣き始める時期, 痛いと言う時期, 泣き止んだ時期), および, 幼児と医療者・親・兄弟との関わりを抽出し, 予防接種を受ける対象の行動の類型化を行った.
その結果, 予防接種における年少幼児の行動は, 嫌がり・泣き始め・泣き止みの時期, 痛いという表現, 第1回・第2回の行動の相違点から, 3つに類型化した. タイプⅠの行動は, 第1回・第2回とも注射針刺入までに嫌がり泣き始め, タイプⅡの行動は, 第1回・第2回とも注射終了後に痛いと言って泣き始め, タイプⅢは, 第2回においてのみ注射針刺入時に痛いと言い液注入時に泣き始めるという行動であった. 年少幼児でも, 他者と注射の方法や意義について理解できること, 嫌がり・泣きがあってもがんばろうとしていたこと, 痛みに耐えようとしても耐えられないと泣いてしまうこと, 注射を見ることで不安が増強すること, 反応の内容や強さは個人差があることが考えられた.
年少幼児の予防接種におけるケアとしては, 1)がんばるという心構えを支えること, 2)痛み体験を受け止め, がんばったことをほめる, 3)痛みを緩和すること, 4)注射部位の固定・注射の準備の仕方, 5)個別なアセスメントを行うことが示唆された.