本研究の目的は,障害児の母親と障害児の兄弟姉妹(以下「きょうだい」)への面接を行い,①発達の過程で「きょうだい」に見られた気がかりな徴候(以下サイン)とその原因を明らかにすること,②養育者としての母親が「きょうだい」を養育するうえで配慮してきた事柄を明らかにすることである.調査の結果,20名の母親が養育する障害児の「きょうだい」32名中12名にサインが見られた.その内10名のサインの原因が障害を持つ同胞と関係していた.その原因は,「障害児の入院付き添いによる母親不在や家族内の緊張の高まり」,「母親が障害児のことで手一杯で「きょうだい」の育児が手薄になったこと」,「きょうだいが障害児を援助する役割を担い,自分を出しにくいこと」,「友達の障害者への接し方から生じる葛藤」であった.母親が「きょうだい」を育てる上で配慮していることは,「きょうだいに意識して関わる」,「障害児ときょうだいの関係が円滑にいくように配慮する」の大きく2つに分類できた.この具体的な方法として示唆された「きょうだいとだけの時間を持つ」,「障害を持つ同胞のことをきょうだいが理解し尊重できるように配慮する」などの事柄は,障害児ときょうだいを養育する母親へのアドバイスとして有用であると思われる.また,母親が障害児と「きょうだい」を平等に扱うように配慮していても,どうしても障害児の方に母親の注意が向いてしまうこと,母親と「きょうだい」が考える平等の間にはズレが生じやすいなど,同胞が障害を持つことで難しさを伴う事柄も見受けられた。「きょうだい」の順位や障害児の能力を加味した個々の事例に応じたきめ細かな対応の必要性が示唆された.※本研究では,「きょうだい」と記した場合,障害児の兄弟姉妹を表し,同胞とした場合には障害児を表す。