オットセイの卵巣の黄体とその退縮過程,子宮の経産にともなう変化を肉眼的に観察した.材料は,1967年1月から5月に水産庁東海区水産研究所が捕獲したオットセイ,1~10才の29個体のものである.
オットセイの卵巣は肉眼的に妊娠性黄体,その陳旧物と思われる白体および白斑が区別される.
白体は,1個体に最大4個しか見られないので,分娩後4年以内に消失と考えられる.さらに非妊娠性黄体の存在を考慮に入れると,白体の存否による妊娠歴の判定は誤まりを生ずる可能性がある.
子宮角の太さ,表面に見られる溝および割面に見られる脈管層の変化と同側卵巣の白体数との関係から,子宮角に経産による何らかの変化があると考える.