既報において,殻状乾燥モデルに基づく乾燥速度式の設定について報告し3),含水スポンジを仮想食品として考えて速度パラメータを算出して,各種形状について比較検討をしてきた。4)本報は,球状の寒天とにんじんを試料として,乾燥実験を行ない,殻状乾燥モデルの適用性について検討したものである。
乾燥進行に伴なう未乾燥核の表面温度の変化を測定することが不可能であるため,試料の中心温度の測定を行なった。未乾燥核の表面温度として,中心温度と湿球温度をそれぞれ仮定した場合について速度パラメータを算出した。また,ガス境膜の拡散に関する速度パラメータhmを乾燥初期の値に固定した場合についての計算も行なった。
以上の計算結果の比較から,当面する各種の乾燥装置の設計などに対しては,反理論的とはなるが,ガス境膜および乾燥殻状部拡散に関する2つの速度パラメータhmおよびkmを相関させて非線形最小二乗法で同時計算し,未乾燥核の表面温度として湿球温度を仮定する場合が,総括的に実験データとの一致がよく,取り扱いも簡単でよいことが分った。尚,本実験条件下において,寒天およびにんじんの乾燥は,殻状部から乾燥をする現象を示したが,未乾燥核の部分の乾燥も進行していたことから殻状乾燥モデルを満足的に適用できるものではなかった。簡単な乾燥速度式を得る目的に対しては,均一乾燥モデルに基づいた乾燥速度式との比較検討も必要と考えられる。