岡山県児島湾において、1980年5月から1981年3月まで季節毎に計4回にわたり採集した魚類54種770尾から見いだされた寄生性橈脚のうち.Bomolochidae料の7種類について記録した。これらは、サヨリ(Hemirhamphus sajori(Temminck & Schlegel))の鰓にこ寄生していたBomolochus bellones Burmeister,1835を始め、アイナメ(Hexarammos otakii Jordan & Starks)の鼻腔内から得た新属新種Naricolax atypicus gen.et sp.nov.、スズキ(Lateolabrax japonicus (Cuvier)の鰓からののNothobomolochus lateolabracis(Yamaguti & Yamasu, 1959).マナガツオ(Pampus argenteus (Euphrasen))の鰓腔内からのNothobomolochus triceros (Basett-Smith, 1989)、コノシロ(Konosirus Punctatus(Temminck & Schegel))の鰓からの新種Nothobomolochus thambus sp.nov.、セトダイ(Hapalogenys mucronatus Eydoux & Souleyet)の鰓腔内からのOrbitacolax hapalogenyos(Yamaguti & Yamasu, 1959)、およびサッバ(Harengula zunasi Bleeker)の眼瞼したから得たPumiliopes squamosus Cressery & Boyle, 1973の、計7種である。
これらのうち、B.bellonesについてはその形態と分布を詳細に検討した結果、本種とすでに報告されているB.hyporhamphi Yamaguti & Yamasu, 1959、B.tumidus Shiino, 1957、B.hemirhamphi Pillai,1965とは何れも同一種であると判断された。また、アイナメの鼻腔内にみられた新属Naricolax gen.nov.は、Unicolax Cressey & Cressey, 1980と共通するいくつかの形態的特徴が認められたが、両者の間には第3遊泳脚内肢第2節目の剛毛数に差があることから区別され、さらにコノシロの鰓からの新種N.thambusは、顎脚の形態により同属における他の種類と明瞭に区別できることを指摘した。
以上、本論文に記載された2新種を加え、今日までに明らかとなった日本産寄生性橈脚類Bomolochidae科の種類は14種であると認められ 今後の研究に資するためこれらのこれらの種類の分類検索表を示した。