廣島大學經濟論叢 Volume 35 Issue 2
published_at 2011-11-30

昇進判定の適用基準と選好バイアス <論説>

Making Promotion Rules and Supervisors' Preferences <Articles>
Inoue Tadashi
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Abstract
プリンシパル・エージェンシー・アプローチでは、企業内の昇進活動を考察するとき、とりわけ、企業の意思決定者と従業員との間に情報の非対称性が存在するとき、一方、昇進候補となる従業員は昇進に有利となるよう影響行動を行うことで、昇進判定を行う企業の意思決定者に影響を与えようとし、他方、企業の意思決定者は、影響行動への対応行動を含め、結果として生じる期待利益最大化を達成するための基準からのみすべての対応行動を選択しようとする。このアプローチの特徴は、二人の相対立する利害関係当事者が存在し、そして、基本的には、一方の側の利害関係当事者の期待利益最大化原則が貫かれるというものである。これに対し、社会経済的アプローチでは、企業の意思決定者と従業員の利害関係当事者のほかに、第三者の立場から昇進判定を行う意思決定者がいるとする前提で、一方、従業員は利己的利益を追求するため、例えば、企業により社内教育訓練が供給されてもこれに努力投入することを抑制しようと行動し、他方、企業の意思決定者は期待利益最大化を達成するため、例えば、従業員に社内教育訓練等を供給することで特殊技術・知識の修得を促進させようと行動するなかで、第三者である昇進判定を行う意思決定者は、社会的利益を改善するため、(昇進判定の)識別要因を選択しそしてその適用基準を設定することで昇進判定を行おうとする。前者のアプローチをとりあげたのは従来の分析方法の比較のためである。

本稿での目的は、あくまで、後者のアプローチにより、企業内の昇進活動を分析することにある。とりわけ、昇進の事例に関連する利害関係当事者の対立に、第三者である意思決定者が裁定を下すという判例モデルを適用して考察するためである。したがって、この分析の焦点は、関係当事者の対立に裁定を下すための識別要因の選択とその適用基準の設定を明確に示すことにある。また、裁定を下す意思決定者が選好バイアスをもつとき、適用基準の設定が歪められることを明らかにすることである。そして、選好バイアスを所与としたとき、効率の歪みは昇進判定の識別要因の多様性により緩和されることを明らかにする。
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