ナンキンハゼは中国原産の鳥散布型木本で, 日本各地に広く植栽されているが, 逸出個体による生態系への影響が懸念されている。本種を管理する上での基礎データとして, 広島大学東広島キャンパスにおいて, 逸出プロセスとその制限要因について調査を行った。調査地内の成木から約50m離れた林分において, 多数の実生が確認された。枝についた種子は2月から3月にかけて急激に減少し, この間, 鳥による摂食が観察された。圃場での播種実験の結果, 種子の発芽率は高いが, 発芽時期は遅く, 落葉樹の葉の展開が完了しつつある5月下旬になってようやく発芽が確認された。ポット植えの実生を光環境の異なる林分に置いて成長を比較したところ, 鬱閉した林床ではほとんど成長できないことが明らかになった。以上の結果から, ナンキンハゼは, 実生の光要求性が高いにもかかわらず発芽時期が遅いため, 落葉樹が優占する森林への侵入が制限されていることが示唆された。