廣瀬(1992b)では「第1文字を同じくする熟語は, 1つの第1文字を先頭にして意味的なつながりで結ばれて記憶されている」ことが示唆された。そこで, 本研究では複数の異なる意味をもつ漢字に着目し, 複数の異なる意味をもつ漢字は複数の熟語群でまとまりをもち記憶されているのかどうかを検討することを目的とした。実験の結果, ターゲット刺激と同じ漢字であり, かつ意味も同じである漢字がプライム刺激として呈示された場合, ターゲット刺激に対する語彙判断を促進し, 一方, 意味は異なる漢字がプライム刺激として呈示された場合は, ターゲット刺激に対する語彙判断を促進しないことが示された。そして, これらの結果から, 複数の異なる意味をもつ漢字は, 複数の熟語群でまとまりをもち記憶されていると考えられた。