大学生男子20人に系列パターンの追従課題を与えて, 最適制御過程(習得段階)と適応制御過程(転移段階)の両制御過程を完全に見越反応で完了するまで追従させた。適応制御過程で構造パラメータとしてのISIのみが変化させられた非適応群と適応制御過程で系列位置と刺激提示間隔(ISI)という構造パラメータの変化のある適応群について, 4つのパフォーマンス測度(正反応, 見越反応, 誤反応, 無反応)から両群の適応制御過程を比較検討した。その結果, 両群とも最適制御過程の後期段階で, 正反応を減少させながら見越反応を増大させ系列パターンの追従課題を達成した。しかし, 適応制御過程の初期段階に移行した場合, 両群とも見越反応に減少が見られ, とくに複数の構造パラメータの変化のあった適応群では, その低下は著しかった。過去の類似の研究では, 構造パラメータは系列位置だけとかISIだけとかの変化であった。その場合には, その構造パラメータの「変化」部分がゆらぎやノイズの役割を果し, その後に「変化」部分での秩序の増幅現象がみられた。しかし本研究では, そのような「ゆらぎを通しての秩序」形成は見られなかった。そのため, ゆらぎやノイズが古い秩序構造に導入され, そのことにより系が不安定になり, 新しい構造が形成されるいわゆる自己組織化の適応は, ゆらぎの量やノイズの強さを問題にする必要がある。