昭和49年から平成14年までに文部(科学)省から発行された10冊の「盲学校小学部点字教科書編集資料」から、算数科に掲載された内容をたどり、盲児に対する配慮事項の変遷を検討した。分析の観点は、(1)触運動及び触覚による認知の基礎的練習のための教材、(2)珠算、(3)筆算、(4)表・グラフ、(5)絵・写真、(6)盲人用算数教具、(7)立体の2次元表現、(8)数式の点字表記の8項目である。算数科の掲載紙面は大幅に増加し、その内容は盲児の特性を踏まえた丁寧な解説書であることが明らかになった。特殊教育から特別支援教育という流れの中、通常の学級で点字を使用して学習する盲児が増加することが予想される。今後は、多様な教育の場で学ぶ盲児が適切に配慮された点字教科書を使用して学習できる環境を整備することが喫緊の課題である。