悪性腫瘍に対する尿中TGF-β測定の意義
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File |
diss_otsu3004.pdf
12.6 MB
種類 :
fulltext
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Title ( jpn ) |
悪性腫瘍に対する尿中TGF-β測定の意義
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Title ( eng ) |
Detection of Urinary TGF-β as a Tumor Marker
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Creator |
Kuranishi Fumito
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Abstract |
増殖因子の中でもTransforming Growth Factor-β(以下TGF-β)は腫瘍細胞の増殖抑制など種々の作用をもつ因子として近年注目されている。特にその体内動態に関しては数多くの研究がなされてきた。
著者はイオン交換クロマトグラフィーとEnzyme Linked Immunosorbent Assay法(以下ELISA法)の一種であるAvidin-Biotin peroxidase Complex法(以下ABC法)を用いて尿中TGF-βを分離精製し,尿中TFG-βが腫瘍マーカーとして有用か否かを検討した。 同時に血清中TGF-βもABC法にて検出し,尿中TGF-βとの関連性を検討し,さらに腫瘍からのTGF-β産生を証明するために,腫瘍組織内TGF-βの局在を免疫組織学的染色法にて検索した。 結果は以下の如く要約される。 1. 悪性腫瘍患者6例またその対象として健康成人6例より得られた尿中TGF-β活性を凍結乾燥,酸-エタノール法,ゲル濾過後ABC法にて検出した。 健康成人6例,悪性腫瘍6例の計12例全てにおいて排除限界をこえる分画にTGF-β活性を認めたが,TGF-βの分子量である25,000付近にTGF-β活性は認められず,本法ではTGF-βは複合体を形成して存在するもののみが検出されていると考えられた。従って凍結乾燥,ゲル濾過,ABC法によるTGF-βの分離・定量は精製率・回収率共に低く,また手技も煩雑なため測定手技としては不適当と考えられた。 2. 著者は今回初めて尿中TGF-β濃縮・精製を,イオン交換クロマトグラフィー(DEAE Sephacel)を採用し凍結乾燥などの過程を省略することによりサンプルのゲルへの吸着を最小限とし,回収率の改善に成功した。 DEAE Sephacelにより分離しABC法にてTGF-βを検出したところpH5.2付近において,悪性腫瘍群では健康成人に比べ高く幅の広いTGF-β活性を認めた。TGF-βの1日尿中への排出量を比較してみると健康成人10例では平均値9.8±5.2μg/dayと低く,一方悪性腫瘍群として肺癌10例,肝癌8例,胃癌6例計24例は49.5±35.8μg/dayと有意に高値であった(p<0.01)。 3. イオン交換クロマトグラフィーで精製されたTGF-βはSodium Dodecyl Sulfate Polyacrylamide Gel Electrophoresis(以下SDS-PAGE)により,分子量25,000付近に単一バンドとして認められた。また等電点電気泳動(Iso-electric focusing-Polyacrylamide Gel Electrophoresis:以下IEF-PAGE)においてはpH5.2付近にバンドを認めた。 4. 尿中TGF-βの腫瘍マーカーとしてのカットオフ値を,健康成人の平均値+2SD(SD=standard deviation)20.1μg/dayとすると,肺炎の陽性率は20.0%,肝硬変は33.3%であった。一方肺癌10例の陽性率は80%,Stage別ではStage Iは100.0%,Stage IVは60.0%,肝癌8例の陽性率は75.0%,Stage Iでは100.0%,Stage IVでは50.0%であった。胃癌6例の陽性率は66.6%であり,Stage Iでは33.3%,Stage IVでは100.0%であった。全悪性腫瘍24例の感度75.0%,特異度72.7%であった。従って悪性疾患の指標として尿中TGF-βの定量は非常に有用と考えられた(χ2=6.63,p<0.01)。 5. 尿中TGF-βと他の腫瘍マーカーを比較検討した。血清中CEAにおいては肺癌10例,肝癌7例,胃癌5例これら悪性腫瘍22症例のCEA陽性率は54.5%に対し,尿中TGF-βの陽性率は72.7%であった。肝癌7例において,血清中AFP陽性となる症例は1例(14.3%)であり,PIV-KA-II陽性症例は7例中5例(71.4%)であった。一方尿中TGF-β陽性症例は7例中5例(71.4%)であった。他の腫瘍マーカーに比較して,尿中TGF-βは鋭敏と考えられた。 6. 手術前後の尿中TGF-βの変動を治癒切除可能であった肺癌Stage Iの3症例で比較検討した。3症例共に術後,著明に低下しており,尿中TGF-βは腫瘍由来と推測され,手術後の経過を見るパラメーターとしても非常に有用と考えられた。 7. 免疫組織学的にTGF-βの局在を検討したところ,肺癌,肝癌,胃癌の癌細胞の細胞質にTGF-βのびまん性濃染像を認めた。またTGF-θレセプターも癌細胞において濃染像を認めた。 以上の結果より尿中TGF-βは癌細胞由来であり,また今回開発された本測定法は簡便かつ回収率も高く,得られた尿中TGF-βは悪性腫瘍に対する腫瘍マーカーとして臨床的に有効な指標となると考えられた。 Recently, studies on the biological effects of transforming growth factor-β (TGF-β) have documented that urinary TGF-β may serve as a good tumor marker.
Using ion exchange chromatography and the avidin-biotin peroxidase complex method, urinary TGF-β from cancer patients as well as good numbers of normal controls was detected. TGF-β activity in the malignant group (N=24 patients) was compared with that in the control group (N=10). Among the 24 patients with cancer, 10 had lung cancer, 8 had hepatocellular carcinoma, and 6 had gastric cancer. There was a significant difference in the daily output of urinary TGF-β between the two groups. The level in the control group (N=10) was 9. 8 ± 5. 2 µg/day whereas the level in the malignant group was 49. 5 ± 35. 8 µg/day. (p<0. 01) The positive rate of urine TGF-β as a tumor marker (cutoff=20.1 µg/day) for pneumonia, liver cirrhosis, lung cancer, hepatocellular carcinoma, gastric cancer was 20.0%, 33.3%, 80.0%, 75.0%, and 66.6%, respectively. In the malignant group, the sensitivity was 75.0% and specificity was 72. 7%. (χ2=6.63, p<0.01) Immunohistochemical staining showed strong diffuse expression in the cytoplasm of malignant cells. The present results indicates that urinary TGF-β originates from malignant cells and serves as good clinical marker of malignant tumors. |
Keywords |
Urine TFG-β
Tumor marker
Avidin-Biotin peroxidase complex method
Ion exchange chromatography
Immunohistochemical staining
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NDC |
Medical sciences [ 490 ]
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Language |
jpn
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Resource Type | doctoral thesis |
Rights |
Copyright(c) by Author
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Publish Type | Not Applicable (or Unknown) |
Access Rights | open access |
Source Identifier |
広大医誌, 44(6), 319-341, 平8・12月 (1996)
references
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Dissertation Number | 乙第3004号 |
Degree Name | |
Date of Granted | 1997-10-23 |
Degree Grantors |
広島大学
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