一般病棟の看護師を対象とした終末期がん患者と家族を支援する看取りケア実践教育プログラムの開発と有効性の検証
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種類 :
全文
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タイトル ( jpn ) |
一般病棟の看護師を対象とした終末期がん患者と家族を支援する看取りケア実践教育プログラムの開発と有効性の検証
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作成者 |
吉岡 さおり
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抄録 |
【研究の背景と目的】
がん死亡者数が年間30万人を超える現代において、その約90%は一般病棟で死亡している現状にあり、一般病棟の看護師による終末期のがん患者とその家族に対する質の高いケアの提供は重要な課題となっている。しかし、一般病棟におけるケアの現状は、日常生活援助などの身体的ケアが中心であり、家族の看取りを支えるケアに関しては十分に実施されていないことが先行研究から明らかとなった。 そこで本研究では、「患者を含む家族を1つのケアユニットと捉え、家族の看取りを支援するために看護師が終末期のがん患者と家族に行うケア行動」を看取りケアと定義し、1)ケア実践における課題、つまり、実践に関連する要因を明らかにし、2)その結果を基に一般病棟の看護師を対象とした看取りケア実践教育プログラムを作成した。そして、3)看取りケア実践教育プログラムを一般病棟の看護師に対して展開し、プログラムの有効性を検討した。これらの目的の達成において、研究1~3を段階的に展開した。 【研究方法と結果】 研究1:一般病棟の看護師による看取りケア実践に関連する要因の質的分析 研究2における質問紙作成の基礎資料とすることを目的に、がん看護専門看護師4名に面接調査を実施した。緩和ケアチームメンバーや病棟師長の立場で一般病棟の看護師と関わる対象者の教育的視点から、看取りケア実践の関連要因についての語りを得た。 分析の結果、看護師の態度に影響する【看取りに関する個々の看護師の看護観】【看取りにおける役割意識】【チーム内の質の高い情報の共有】【スタッフ間の相互作用による看取りに対するチームの価値観の形成】【看取りに関する個々の看護師の体験】、知識・技術に関する【症状緩和に関する基本的知識と実践能力】【家族看護に関する基本的知識】【社会資源に関する基本的知識】【終末期看護に必要な理論の基本的知識と実践のリンケージ】【コミュニケーションスキル】の10要因が抽出された。 また、これらの要因は、「態度」→「知識・技術」→「看取りケア」の順に段階性を持つと仮定した。従って研究2では、関連要因の分析に加え、仮説モデルの適切性の検討が課題となった。 研究2:一般病棟の看護師による看取りケア実践に関連する要因の量的分析 看取りケア実践の関連要因の特定を目的に、一般病棟の看護師を対象に質問紙調査を実施した。質問紙は、看取りケアの実践能力を測定する看取りケア尺度(吉岡ら,2009)に加え、研究1で得られたカテゴリーに基づく、看取りケアに対する態度を測定するFATCOD-B-J(中井ら,2006)、Death Attitude Inventory(DAI)(平井ら,2000)、看護師のコミュニケーションスキル測定尺度(上野,2005)、理論やモデルを用いた看護展開能力を測定する、看護師の自律性尺度第IV因子(菊池ら,1997)、知識の程度の認識、所属チームに対する評価項目、属性、学習経験などから構成した。 調査の結果、337の有効回答が得られた(回収率56%、有効回答率93%)。看取りケア尺度を従属変数とする重回帰分析の結果、「態度」に関連する要因として、所属チームに対する評価(β=.14,p<.01)、FATCOD-B-J:死にゆく患者へのケアの前向きさ(β=.12,p<.05)、実践の手本有(β=.10,p<.10)、DAI:解放としての死(β=.09,p<.05)が抽出された。また、「知識・技術」に関連する要因として、家族アセスメントに関する知識(β=.28,p<.01)、理論やモデルを用いた看護展開能力(β=.19,p<.01)、症状コントロールに関する知識(β=.13,p<.05)、研修会への参加(β=.11,p<.05)が抽出された。調整済みR2=.48であった。 さらに、これらの要因を観測変数とする仮説モデルの共分散構造分析を実施した結果、統計学的許容範囲内の適合度指数が得られ(GFI=.913,AGFI=.869,CFI=.923,RMSEA=.087)、卒後の継続教育による実践能力の向上を表すモデルとして妥当であることが示唆された。 研究3:一般病棟の看護師を対象とした看取りケア実践教育プログラムの展開と教育効果の評価 看取りケア実践教育プログラムを作成して展開した。プログラムの内容は、研究2で抽出された「知識・技術」の関連要因を根拠に、①家族アセスメントの基礎知識、②症状コントロールの基礎知識、③看取りケアに関する理論やモデルの基礎知識と実践への応用とした。また、所属チームに対する評価が「態度」に関連していたことから、同一病棟メンバーでグループを編成し、グループディスカッション、事例発表会を取り入れた5回構成のプログラムとした。 参加者はA施設の一般病棟看護師25名とし、欠席および質問紙に不備の無い22名を分析対象とした。研究デザインは対照群を設定しない前後比較介入研究とし、介入前、終了直後、終了後2ヶ月に評価を行った。 教育効果として、主要アウトカムである看取りケアの実践能力は終了直後に有意に上昇し(p<.01)、2ヶ月後も維持されていた。看取りケアに対する自信、知識についても同様であった。態度については、介入前から高水準にあった得点が終了直後にさらに上昇し、2ヶ月後には介入前とほぼ同水準を保っていた。また、教育方法、グループ編成ともに、教育効果を高める展開方法であったことが示唆された。有用性においても高い評価が得られた。 【総括】 本研究では、一般病棟の看護師を対象とした看取りケア実践教育プログラムを開発し、その有効性を検討した。プログラムの内容と展開方法は、面接調査(研究1)の質的分析に基づいて作成した質問紙調査(研究2)の結果を根拠に、家族アセスメント、症状コントロールに関する内容を理論やモデルと関連付けながら看護チームを基盤に学習する方法とした。 研究3の研究デザインは対照群を設定しない前後比較介入研究とし、プログラムを展開した。分析対象は22名であった。評価指標の分析の結果、看取りケア実践教育プログラムは、看取りケア実践能力の向上に寄与するプログラムであることが示され、その有効性が示唆された。今後は、本プログラムを一般病院に所属する専門看護師や認定看護師と協働した院内研修として企画し、汎用していくことが課題である。 |
NDC分類 |
医学 [ 490 ]
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言語 |
日本語
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資源タイプ | 博士論文 |
権利情報 |
Copyright(c) by Author
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アクセス権 | オープンアクセス |
学位授与番号 | 甲第5486号 |
学位名 | |
学位授与年月日 | 2011-03-23 |
学位授与機関 |
広島大学
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