暗騒音混入下の音環境システムに対する静的及び動的状態推定法
アクセス数 : 652 件
ダウンロード数 : 132 件
今月のアクセス数 : 5 件
今月のダウンロード数 : 0 件
この文献の参照には次のURLをご利用ください : https://doi.org/10.11501/3052275
ファイル情報(添付) |
diss_ko881.pdf
54.8 MB
種類 :
全文
|
タイトル ( jpn ) |
暗騒音混入下の音環境システムに対する静的及び動的状態推定法
|
作成者 |
張 兵
|
抄録 |
実環境下でわれわれが遭遇するほとんどの信号は、物理的要因はもちろん、社会的要因から人間の自由意志に基づく主体的行動までが絡み合って、しばしば非ガウス型の複雑多様な確率変動を示し、しかもそのメカニズムを公知の法則的関係で説明できないことが多い。そして、任意変動分布型の外来雑音が混入し、厳密には非定常性を示すのが常である。しかし、いくら複雑な音環境とはいえ、一定した制御や予測目的のためには何らかの形で予測への法則性や関連様式を事前に見出す必要がある。特に、外来雑音の混入下で、上述の複雑さにできるだけもれなく対応できる統一的な静的及び動的な状態推定法を設定することが不可欠である。本研究は、このような実際的背景から、任意分布形状の暗騒音混入下において、分布予測に整合した情報欠損の少ない一回帰分析法と任意のゆらぎ変動形態を示す対象の未知信号波形を動的に推定できる広義ディジタルフィルタのプログラム論理を考察したものである。
本論文は、緒論、2部4章、結論からなっており、各章においてそれぞれ新たな研究成果が含まれている。 具体的に、緒論では、本研究の工学的背景、目的ならびに研究の概要について述べている。 第一部では、音環境システムにおいて、システムの入出力関係を回帰関係として捉え、静的な立場から、状態推定問題を考察している。そこで、任意の確率分布形状を許す説明変数をもとに目的変数がもつ任意のゆらぎ分布全体が予測できる、新たな一回帰分析法を提案している。そして、暗騒音の混入下で、新たに提案した回帰の関係様式に内在する各種相関特性を反映した未知パラメータを、種々の誤差評価規範に従って同定している。 第1章では、実現象のゆらぎが示す複雑多様さに対し、あらかじめ情報欠損を招くことのないよう、分布予測に整合した新たな回帰分析の一試みを見出している。具体的には、ベイズ定理を基盤にして、説明変数と目的変数間での回帰モデルを、線形・非線形のあらかじめ一定した関数様式の枠組で与えず、現象がもつ複雑多様さのさまざまな程度を秩序ある姿で逐次反映できるよう、その回帰モデルには級数展開型の階層表現を計画的に導入している。特に、各変量の振幅変動が正負両領域にわたる場合に対し統計的エルミート展開型の回帰モデルを、その変動が非負の領域内にのみ留まる場合には、統計的ラゲール展開型の回帰モデルを提案している。最後に、回帰モデルの設定にとって、最も本質的な情報の抽出のみに目を向け、2変量間における線形・非線形の各種相関情報のみを、浮き彫りに反映できる新たな回帰モデルを具体的に提案している。そして、本手法の一スペシャルケースに公知の標準路線におけるガウス分布形変数、線形回帰モデル、最小自乗誤差評価に基づく回帰分析法が含まれ得ることも合わせ示している。さらに、本手法がもつ実際的有効性の一端も検証するために、音環境で観測した実データに本手法を適用して実験的にも確認している。 第2章では、回帰関係としての一般化した関係様式をまず第1章に沿ってあらかじめ設定した後、これに内在する各種相関特性は未知パラメータとみなして同定する新たな手法を提案している。しかし、実環境システムにおいては、観測雑音が混入してくるのが避けられないために、この雑音対策も考慮する必要がある。そこで、以下の種々の誤差評価規範に従って、いくつかの同定法を提案している。まず、任意暗騒音混入下において、入力と出力間の線形・非線形の各種相関情報に基づくパラメータ同定法を考察している。つぎに、入力と出力間の相互情報量を最大にするパラメータが最良の推定値となることから、Minimumエントロピー評価に基づく同定法を提案している。また、人間の主観的な要求によって、公知の最小自乗型誤差規範を襲用できる方向へ新たに変形した一同定法も提案している。さらに本手法の有効性を実験的に検証するため、室内外及び室内音響システムにおいて、暗騒音の混入下で、このシステムに関する回帰パラメータを具体的に同定する手法と同定時とは異なった他の異種実騒音入力を相加した場合の応答分布予測を行なっている。 第二部では、独立した任意変動分布の外来雑音が混入することにより汚された実確率システムに着目し、その逐次観測データの内から、潜在する対象の未知信号波形を動的に推定できる広義ディジタルフィルタのプログラム論選を考察している。まず、状態変量の振幅変動が正負両領域にわたる場合に対し、特に、カルマンフィルタを階層的に一般化した形態で、状態推定理論を導出する。そして、考察対象として、任意非ガウス形音確率環境のエネルギーシステムに着目し、特にエネルギーシステムに整合した広義ディジタルフィルタの一設計理論を導出している。 第3章では、非ガウスの任意変動分布を示す独立した外来雑音が混入する実状況下での確率システムに着目する。そしてこの外来雑音により汚された線形・非線形の実確率システムに対する逐次の観測データをもとに、潜在する対象の未知信号を動的に推定してゆく広義ディジタルフィルタのプログラム論理を導出する。具体的には、変動の任意非ガウス分布特性に対処でき、しかも、公知のカルマンフィルタを展開初項の基幹に取って、パラメータ微分の逐次形式で表された階層構造をもつ状態推定アルゴリズムの一般化表現を新たに導出している。ここに導出した推定理論はカルマンフィルタにおけると同様観測値との一次相関情報を利用すること以外に、非ガウス性の高次相関情報も積極的に利用している。もちろん、従来のカルマンフィルタも一スペシャルケースに含んでいる。さらに、本手法のもつ実際的有効性の一端を検証するため、実際の室内外におけるさまざまな住環境の音響データに本手法を適用し、その実際的有効性も確認している。 第4章では、騒音環境を一旦エネルギーシステムとして把握し、任意の分布形状を示す暗騒音の混入下で、実音響システムの逐次計測データから対象とする未知騒音のみを動的に推定する新たな手法を設定する。具体的には、変動の非ガンマ分布特性に対処でき、しかも、パラメータ微分形で表された階層構造を持つディジタルフィルタの状態推定に関する新たなプログラム論理を提案している。さらに、本手法の持つ実際的有効性の一端を検証するため、室内音響分野の実問題に着目し、暗騒音が混入する実状況下で、残響曲線を推定したり、遮音システムの音響パラメータを推定したりする実際的問題に本手法を適用している。 結論では、本論文で新たに得られた研究成果をまとめるとともに今後に残された研究課題について述べている。 |
内容記述 |
目次 / p5
緒論 / p1 第一部 情報欠損を招かない暗騒音混入下の静的な一状態推定法 第1章 音環境システムの応答分布に整合した一回帰分析法 1.1 緒言 / p7 1.2 理論的考察 / p9 1.3 実験的考察 / p25 1.4 結言 / p32 第2章 暗騒音混入下における回帰分析法の一般化 2.1 緒言 / p36 2.2 理論的考察 / p37 2.3 実験的考察 / p50 2.4 緒言 / p65 第二部 階層化した広義ディジタルフィルタに基づく動的な一状態推定法 第3章 非ガウス確率システムの動的な一状態推定法 3.1 緒言 / p66 3.2 理論的考察 / p67 3.3 実験的考察 / p80 3.4 結言 / p86 3.5 付録 / p90 第4章 エネルギー確率システムの動的な一状態推定法 4.1 緒言 / p96 4.2 理論的考察 / p97 4.3 実験的考察 / p109 4.4 結言 / p118 結論 / p120 謝辞 / p124 参考文献 / p125 |
NDC分類 |
電気工学 [ 540 ]
|
言語 |
日本語
|
資源タイプ | 博士論文 |
権利情報 |
Copyright(c) by Author
|
出版タイプ | Not Applicable (or Unknown)(適用外。または不明) |
アクセス権 | オープンアクセス |
学位授与番号 | 甲第881号 |
学位名 | |
学位授与年月日 | 1990-03-26 |
学位授与機関 |
広島大学
|