水平力を受ける建物基礎根入れ部と地盤間の摩擦抵抗に関する研究

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diss_ko4436.pdf 35 MB 種類 : 全文
タイトル ( jpn )
水平力を受ける建物基礎根入れ部と地盤間の摩擦抵抗に関する研究
作成者
渡邊 徹
抄録
建築基礎構造の設計は、日本建築学会において限界状態設計法を指向した設計指針が提示されるなど、性能規定型設計あるいは限界状態設計法へ移行する段階にある。基礎の限界状態に関連する問題のうち、特に重要となるのは、地震時における杭を含めた基礎の保有耐力の問題であると考えられる。建物に地下室などの根入れ部がある場合、水平力に対して大きな抵抗が期待できるが、現状では主に受働側の土圧を考慮しているにすぎず、也下壁側面と地盤などの摩擦抵抗については十分に考慮された設計が行われているとは言い難い。本論文は、根入れ部を有する建物基礎の限界状態を考慮する上で重要となる、地盤と基礎の摩擦抵抗に着目し、この抵抗を含めた基礎の水平挙動の評価方法を提案するものである。論文ではまず、研究例の少ない地盤と基礎根入れ部の摩擦抵抗性状に関して実験的に明らかにするため、遠心模型実験や原位置実験を行い、その挙動が一次の双曲線関数で評価できることを示している。ついで、地盤の抵抗を集中ばねでモデル化し、地盤ばねの非線形性を双曲線関数により規定した解析モデルを提案し、同関数の初期勾配を弾性論に基づいて決定する手法を示している。そして、模型実験や建物根入れ部を模擬した既存ケーソンによる実験結果との比較を行い、提案手法の妥当性を明らかにしている。

本論文は6章から構成されており、その概要は以下の通りである。第1章 「序論」では、地下室などの根入れ部を有する建物基礎の水平抵抗に関する既往の研究内容を示し、本論文の位置づけ、本論文の目的や構成を明らかにした。第2章 「根入れ部側面と地盤間の摩擦抵抗に関する模型実験」では、水平力を受ける地下壁側面と地盤との摩擦抵抗性状を把握する目的で行った遠心模型実験の内容を示した。実験では、根入れ側面部を模擬した壁要素模型を乾燥砂地盤中に設置し、模型に遠心力を付与した状態で静止状態から地下壁が水平に変位した場合の摩擦力を測定した。実験結果を分析し、壁の表面粗さや地盤の相対密度が摩擦抵抗性状に与える影響などについて考察した。第3章 「根入れ部底面と地盤間の摩擦抵抗に関する模型実験」では、基礎底面部と地盤との摩擦抵抗を遠心模型実験及び原位置小型模型実験により測定した内容を示した。いずれの実験ともに、直接基礎模型と直接基礎に杭基礎を併用したパイルド・ラフト基礎模型を用いて終局状態に至るまで水平載荷を行っており、両者の比較から基礎直下に伝達される鉛直応力が異なる場合の摩擦抵抗性状について検討した。

第4章 「既存ケーソンを用いた原位置水平載荷実験」では、建物根入れ部と同様に躯体剛性の高い既存ケーソン基礎を用いた水平載荷実験を行い、ケーソンの受働抵抗力や側面摩擦力を測定した。実験では、現状地盤の状態で通常に載荷する試験体に加え、側面摩擦力を測定するために既存ケーソンの前背面の地盤抵抗を出来るだけ除去して側面摩擦要素を抽出した試験体に対して静的な水平載荷を行った。両者の実験結果を比較検討し、受働抵抗や側面摩擦の抵抗性状について考察した結果を述べた。第5章 「根入れを有する建物基礎の水平挙動に関する解析モデルの提案」では、根入れ部の抵抗要素の非線形挙動を考慮した解析モデルを提案した。解析法には、各地盤抵抗を集中ばねでモデル化した実用的な手法を適用し、地盤ばねの非線形性は、実験結果を基に構築した1次の双曲線関数で規定した。双曲線関数を特性づける極限抵抗値と初期勾配について、前者は地盤のせん断強度から、後者は弾性論に基づき地盤の初期せん断弾性係数から求める方法を示した。第3章及び第4章の実験結果に対して提案する解析モデルを用いた解析を行い、解析モデルの妥当性を明らかにした。第6章 「結論」では、本研究を通して得られた結果や知見を総括して示した。
言語
日本語
資源タイプ 博士論文
権利情報
Copyright (c) Author
アクセス権 オープンアクセス
学位授与番号 甲第4436号
学位名
学位授与年月日 2007-09-30
学位授与機関
広島大学