学部・附属学校共同研究紀要 41 号
2013-03-22 発行

新学習指導要領の下での授業実践 : 伝統的な言語文化の学習における小・中・高の連関について(2)

Classes based on the new course of study : On coordination of the curriculum among elementary, junior and senior high schools in learning traditional linguistic culture (2)
松本 小百合
全文
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AnnEducRes_41_109.pdf
Abstract
新学習指導要領により,従来は中学校で目指されていた「古典に親しむ」というねらいが小学校に前倒しされたことから,中・高間で考えればよかった連関を,小・中・高間で考えなければならないことになった。今回は小・中いずれの教科書にも掲載されている『枕草子』「春はあけぼの」を取り上げて小学校5年生と中学校3年生で授業をし,その実践をもとに考察を行った。いずれの授業実践においても,学習者にとっての既知と未知との接点を確かめていくため,比較という方法をとったところ,その学習者にもたらす効果は小学校と中学校とでは異なるものとなった。「春はあけぼの」の筆者の捉え方と自分たちの捉え方との相違点の指摘に関してはそれほどの違いはないものの,個々の記述内容を比べてみると,中学3年生では,より具体的で,かつ見方や感じ方の内実にまで踏み込むような形での比較が行われている。また,中学3年生が授業で書いた「自分たちと四季」の中で,「日本人」という言葉を用いてまとめていた共通点を指摘するものは興味深く,高等学校での学習において「伝統的な言語文化」として,古典の再発見を行っていくことにつないでいくことができるのではないかと考えられる。