学部・附属学校共同研究紀要 41 号
2013-03-22 発行

モードのジャポニスムを通して日本の布と着物のちからを発見する衣生活領域の授業開発

Development of clothing education on the power of japanese textile and kimono by the learning of fashion in japonisme
佐藤 敦子
全文
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AnnEducRes_41_11.pdf
Abstract
家庭科の新学習指導要領において重視されている,「日本の伝統と文化の尊重」を高等学校の「家庭基礎」の中でどのように取り上げるのが適切か,ということを衣生活領域で探ろうとしたのが本研究である。衣生活の学習には,①衣に関する科学を学び,科学的な思考方法を身につけて日常生活を合理的なものに改善することができる,②針と糸と布を使ったものつくりの体験により,手指の巧緻性が高まると共に,ものを創造することの楽しさを味わい,精神を豊かに育むことができる,③日本の世界に誇るべき布や衣装の学習を通してこれらに対する敬意が芽生え,伝統文化を継承発展させようとする気持が生まれて,日本人としてのアイデンティティに結びつく,という教育的価値がある。本研究では特に③に焦点を当てて,「モードのジャポニスム」という観点から,日本の着物がコルセットによって成形された西洋の衣装の構造を変えたことを発見させる実験授業を行い,その効果をアンケート等を通して検証した。その結果,今回の授業は,通常の家庭科授業の範囲を超えて,衣生活の歴史や文化の世界に生徒を誘い,この領域の学習に新しい価値を付加することが明らかになった。